初めてその建物を見たのは、夏の午後でした。空は白く曇っていて、強い陽ざしのかわりに、やや湿った風が丘の上を吹き渡っていました。車を降りると、目の前に立っていたのは真っ白な壁の大きな箱のような建物。そこに「DUPON 35 MATILDE」と黒い文字が並んでいるのを見て、ああ、これが噂の店かと思いました。遠くからわざわざ来る価値があると聞いて、少し胸を高鳴らせていたのです。
扉を押して中に入ると、外観と同じようにすっきりとした空間が広がっていました。窓からは午後の光が差し込み、床の影がきれいに伸びています。けれど、思っていたよりずっと狭い。白い壁と天井が広がりを感じさせる分、逆に置かれているものの少なさが際立ってしまうようでした。歩くうちに、あれ、こんなものだったかしらと胸のなかで呟いていました。
雑貨や服が並んでいる棚は、ひとつひとつは丁寧に選ばれているように見えました。けれど、種類は多くない。食器、布物どれも悪くはないけれど、都会でよく見かけるセレクトショップの延長のように感じられてしまいます。もっと地方ならではの驚きや、偶然の出会いのようなものを期待していたからでしょうか。狭さと品数の少なさが、期待の大きさに比べて寂しく思えたのです。
遠くから出かけて来たという気持ちが、余計に残念さを増幅させました。都会から車を走らせ、山を越えてようやく辿り着くその時間と距離。旅の途中に立ち寄るならまだしも、ここを目的に訪ねるとすれば、それなりの特別さが欲しくなります。たとえば、知らなかった生活の道具や、見たこともない手触りの服、あるいは土地の匂いをまとった何か。けれど、ここにはそういう驚きが見つからなかったのです。清潔で、整っていて、落ち着いてはいる。けれどそれは、どこかで見たことのある風景にすぎませんでした。
人はわがままなもので、狭いと文句を言いながら、広すぎても落ち着かないと感じるものです。品数が少ないとがっかりする一方で、あまりに多すぎると選ぶのが疲れてしまう。今回の不満も、そのあいだで揺れ動く自分の気持ちの反映かもしれません。それでも、やはり遠さを考えると、胸の中に小さな空洞のようなものが残ってしまう。わざわざ来るには、もう少し理由が欲しいと思ってしまいました。
店の人たちは感じがよく、静かに見守るように接してくれました。押しつけがましくなく、こちらの歩調を乱さない距離感。その点は好ましかったのです。静かな店内に、時折小さな笑い声が混じり、午後の光が傾いていく。そんな風景は、それなりに心に残りました。ただ、それだけでは旅の記憶を支えるほどの強さにはならなかった。どこにでもある優しさであり、どこにでもある光景であった気がします。
都会から離れてまで訪ねる店というのは、心に残る一枚の絵葉書のようであってほしい。ふとした瞬間に思い出され、また行きたいと胸が動くような。けれど、DUPON 35...
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