私は横浜生まれの横浜育ち。 私は幼少時より勝烈庵に連れて行かれ、ここが最強のカツ屋なのだ、ここほどうまいカツ　屋はないのだと両親より刷り込まれた。子供ながら自信に溢れながらこう言った。勝烈庵最高にうめーわ。

私は勝烈庵こそ最強で最高にうまいカツ屋だと確信しており、周囲にそうと吹聴していた。

時は2018年。仕事で日向市を訪れた。 不二かつ。ふーん、地元で人気の日向豚。 そうですか、ふーん。

完全に見下していた。完全に勝烈庵の勝利だと。試合をするまでもなく、大人が赤子の手をひねるように圧倒的な勝利だと確信していた。それはそうとんでもない大勝利、10馬身差だと。

不二かつのロース。不二かつのロース。不二かつのロース不二かつのロース。

ああ甘い。とろける。口いっぱいに広がる油。 止まらない涎。口いっぱいに白飯をほうばりたくなる衝動を抑えることが出来ない。我慢できない。 まるで、恋で周りが見えなくなる少女のように、ロースかつから視線を外すことが出来ない。ど真ん中ストライク激しめに。甘くとろける、心いっぱいに広がる何か。天に舞う。

いや、勝烈庵こそ最強なのだ。 父も母も姉も嫁もそう言わしめた。 最強なのだ。最高なのだ。

どどうして、不二かつのほうがうまいんだ？ それも圧倒的にい。

ああ、不二かつが最高にうまい。 不二かつロースかつ。 不二かつロースかつこそ、この世で最強にうまいかつ屋だ。

そしていま知人には不二かつをひたすら推す私がいる。

井の中の蛙大海を知らず。 されど知らぬが仏。

私は世界が広いことを知る。

高齢に向かっていく両親は、勝烈庵こそ最強で良いのだ。何より本人がこの世で最強で最高にうまいめし、そう思うことが幸せなのである。