693年、舎人親王が開基したと言われる東明寺は、山号を鍋蔵山とする高野山真言宗のお寺でご本尊は薬師如来。舎人親王の母君・持統天皇が眼を患った時、翁に姿を変えた白鬚明神が舎人親王の枕元に現れ、お告げによってすくった霊水で母君の眼を洗ったところ、たちどころに平癒し、お礼に精舎を建立したのが当寺の始まりとのことである。
ご本尊は9世紀半ば頃の作で桜の一木造りで両肩と両膝が大きく張り出した堂々とした体軀をし、その上にまとった衣の表面に刻まれるやや硬い翻波式の衣文とが、豪快な印象を与えている。また、光背には赤外線写真で墨による唐草模様が描かれていることが確認されており、国指定重要文化財。平安後期作の毘沙門天立像、10世紀後半作の吉祥天立像も国指定重要文化財。
寺宝の「雷様のへそ」は、このお寺のお坊さんが、境内の松の木の下で昼寝をしていた雷様に近づき、首尾よく奪い取ったへそだそうだ。以来、東明寺には雷は落ちないとされている。
21/06/03、ご本尊ご開帳にあわせて参拝した。集落の中を通る細い道のつきあたりにお寺があり、緑豊かなところだった。本堂の中でお目にかかったご本尊は、聡明なお顔立ちで、説明の通り、立派な体格をされ、豪快なお姿だった。「雷様のへそ」は、意外と大きなものだった。本堂で対応していただいた若いご住職は、静かな感じのする気さくな方だった。帰り、お寺から見えた風景は、大和の原風景だと思う。