つい最近まで自衛隊の通信施設の敷地として使われていたので、宅地開発等から免れる事ができ保存状態は完璧です。こういう眺めの良い(射界が確保できる)高台は別荘地として開発され失われる事が多いのです(千葉県洲崎砲台など)。
敵艦から見えないように掘り窪められた砲座をはじめ、弾薬庫、揚弾筒、兵員待機所、砲座間を繋ぐトンネルや給水用の濾過設備など要塞施設一式が丸ごと残り、すぐに現役復帰できそうな感じです。ここから何を撃ったらいいのかは知りませんが(笑)。
ちなみにここに据えられていた大砲は、日露戦争の旅順要塞攻略戦で大活躍した28センチ砲です。射程は約7kmに過ぎず、戦艦大和の46センチ砲、射程42kmと比べると隔世の感があります。
構造的に特殊で面白いのは弾薬庫で、見どころを説明します。 火薬は衝撃や火気に弱く、爆発の恐れがあるので基本的に砲座の周辺には必要最小限の数しか置かれません。砲座周りの防壁にある窪みは(写真参照)それらを納めるためのもので、本来は鉄製の頑丈な扉でガードされていました。
主な火薬は温度や湿度が一定で、敵からの砲撃にも耐えられる地下の弾薬庫にあります。当然真っ暗なのですが、当時はエジソンが電球を発明したばかりのころで、明かりは石油ランタンしか無かったのです。絶対「火気厳禁」の場所なのにコレは困ったですね(笑)。 そのため部屋に特別な仕掛けがしてあります。
弾薬庫の一部に小さな四角い窓が三つあり(写真参照)、その裏に人がやっと入れるような薄く細長い空間があるのに気付かれましたでしょうか。 これは防爆のための灯り取りで、今は失われていますが四角い窓にはガラスが嵌められ、ランタンは弾薬庫から見てガラスの向こう側に置かれるようになっています。
ランタンは弾薬庫内の空気からは隔離され、直に接しない構造にしてある訳です。しかし広い弾薬庫をランタン二つだけで照らすのは厳しいので、内部全体を石灰で白く塗って光が届くようにしてあります。
帝国陸軍はこの辺りの管理はしっかりしていたようで、あまり爆発事故は聞いた事がありませんが、その点ロシアはいい加減で、弾薬庫のある火気厳禁地帯で平気でタバコを吸う警備兵の姿がよく目撃されていたようです。
そのためかワタシが子供の頃はウラジオストックで、街が吹き飛ぶほどの大爆発事故を何度も起こしていて、よく日本でも報道されていました。
この砲台で唯一残念なのは、東京湾要塞・最大最強だった30センチ連装砲塔砲台跡と射撃指揮所跡が遺構の範囲から漏れてしまい、民地となって自由に立ち入れない事です。
砲座自体は窪地にあって周りが見えないため、距離計を含む射撃指揮装置一式は一番の高台に置かれ一括管理されていました。 また陸軍は28センチ砲の能力不足を知っていたので、戦艦鹿島から取り外した30センチ連装砲塔をここに据えています。射程は21kmもあるので対岸の房総半島まで届くほどです。
現在は観光果樹園「ファーマシーガーデン浦賀」内にあり、入るには予約が必要です。幸い跡地は良く保存されているようではありますが。 なんで指定から漏れたかと言うと、自衛隊が通信施設で必要な範囲でしか土地を取得しなかったからだそうです。
結局、各所に設置された東京湾要塞は一発も発砲することはありませんでした。ただ要塞を恐れたアメリカ軍は艦船を湾内に侵入させる事は無かったので、役割は十分に果...
Read more最近一般公開されたと聞いて訪問。 わたしは週末はフィットネスも兼ねて三浦半島をサイクリングしているのだけれど、いつもこの浦賀から久里浜に抜けるトンネルのところで海の方へ続いている道があって「この先には何かあるのかな?」などと漠然と考えていたのだが、こんな遺構があったのね。
三浦半島は日米の海軍基地があったり、浦賀水道からは沖に海堡が見えたり、他にも観音崎や猿島にも砲台跡があったり、軍事系の施設や遺構がとにかく豊富なのだ。
こちらの千代ヶ崎は、到着までの道中とにかく何にもない道で本当にこの道でいいのかと不安に…。 そして最後の坂は激烈な登りではあったが、なんとか自転車を降りずに登り切ったぞ!
入口から入ると「これからガイドによる40分ほどのツアーが始まりますが、いかがですか?」とスタッフさんからお誘いを受け、せっかくだから参加することに。 ツアー参加者はわたしを含めて6名、年配の方が多い、ついでにガイドもシニアの方。 聞けば本日がガイドデビューとのこと、記念すべき日にご一緒できて光栄です。
れんが造りの要塞で外部からは見えないように地面を掘り下げた通路を進む。砲台も掘り下げられていて、そこからは海は見えないので観測員が敵艦を見て距離と方角を測り、砲撃手に伝えていた、とのこと。
砲は28サンチ榴弾砲、そうです!あの坂の上の雲のアレ、日露戦争の旅順203高地で日本軍が形勢を一気に逆転させたあの兵器。 もしかして旅順にはこの千代ヶ崎の砲を持っていったのですか?と目を輝かせてガイドさんに質問したら、旅順に行ったのは横須賀軍港などのものが中心だったとのこと。
そんなこんなで結構あっという間に40分が経ちガイドツアー終了。こんなに充実したツアーが無料というのもすごい。 最寄りのバス停からはかなり遠いので車かバイクで来るのが吉でしょう。三浦半島で週末サイクリングを楽しんでいる方も是非!(ただし体は冷えるのでそのあとサイク...
Read more(2022.12月来訪) 横須賀市内には東京湾要塞が数多く配置されておりこの千代ケ崎砲台もそのひとつ。 国内各所にある要塞の中でも1番初めにできた要塞群ということでその時代の特徴をよく見る事ができる砲台跡です。 平日は見学不可ですが休日には朝から夕方まで無料で見学できる施設で、入口を抜けるとボランティアガイドの方が案内をしてくれます。 地上部分はガイドさん無しでも見学できますがせっかくここまで来たのならぜひガイドさんと一緒でないと入ることが出来ない地下見学部分に行くべきです。 弾薬庫から第1砲座まで詳しい説明付きで見ることが出来るのでその知識がなくても充分楽しめると思います。 また状況に応じてですが時間配分もしていただけるようでその点も良いです。 地上部分は芝生が気持ちよく冬場は富士が綺麗に見られ、春にはオオシマザクラを眺めつつ東京湾の船を行き交う様子が房総半島越しに見られるのもまた格別です。 地上のみ飲食OKなので春はお弁当を持ってピクニックも楽しそう。因みに犬の散歩もOKだそうです。 ここまで書いていて星一つ減の理由ですが、公共機関を使っての利便性が格段に悪いことです。 最寄りのバス停は(燈明堂入口)ですがそもそもこの便が久里浜浦賀間を通る路線なのですが、それぞれ朝夕を覗いて1時間に1本のみ。挙句そのバス停からも多分20分以上はかかる上、急な上り坂を結構な距離歩かなければならずその点がかなりのリスクだと思います。 ただ解放日のみ上り坂中腹に駐車場があるので、車バイクなどで来るなら少しは良いのかな、という感じ。以前は有料でしたが今は無料で停めさせて頂く事ができるようになりました。
※地上部分飲食OKと書きましたが、敷地内には飲食販売は一切ありません。バス停から砲台入口までの間に自動販売機が2~3台あるだけですのでバス乗車前の(京急久里浜→ウイング久里浜)か(浦賀→京急ストア...
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