トルコライスが大変おいしく、お値段もリーズナブルでした。

隠れ家的な入り口のお店ですが、中は活気に満ちています。 カウンターに座ると、小母ちゃんが「当店の自慢はチキン南蛮です」と教えてくれます。 しかし、この時私は別の目的がありました。トルコライスです。

ラーメンは豚骨、定食屋ではチャンポンが出る、宮崎県の外食事情は実に九州らしいのですが…長崎県名物のトルコライスを出している店は検索した限り、グラバー亭しかありません。

その時、私は迷っていました。京都の美術館で私の大好きな国である『トルコの至宝展』が開催されていたのです。 宮崎から京都までの直線距離は530.9キロ。目の前の日向灘・太平洋を越えねばたどり着けません。安からぬコストと時間をかけて、貧乏人の私が、皇帝の宝石や、きらびやかな衣装を眺めて、それで何になるのだろうか、と。 しかし、トルコへの憧れが消し難いので、一計を案じました。手始めに県内唯一のトルコライスを食べられるお店でトルコ気分を味わって満足すれば行かない、盛り上がれば旅立とうの気分でグラバー亭を訪れたのです。 なお、トルコ人のために断っておきますが、トルコライスは実際にはトルコで食べられている料理ではありません。ピラフをチャーハンになぞらえ、カレーはインド、カツは西洋料理なので、西洋と東洋の文明の十字路であるトルコにその名前を仮託したのです。

さて、グラバー亭に話を戻します。お冷はレモン水でした。 お昼時なので、お店は大入り状態です。待って出てきた料理はとてもおいしく、私も他のお客様に倣って、会計の時小母ちゃんに「大変おいしかったです」と伝えると、「大変おいしいいただきましたー！」と店内に響く大きな声で応えていただきました。 気持ちよく送り出された私は、京都に行く決心を固め、その晩、宮崎カーフェリーの弾丸便を予約し、無事に京都でトルコの至宝展を鑑賞することが出来ました。 おいしさもさることながら、私に元気を与えて一つの決心をさせてくれた、そんな素敵なお店です。