その日の待ち合い席で、Aさんがとった受付番号が空席に充てられ呼び出された。 私たちの番号はゴールまで五組ほど距離があることを高所の案内テレビが示していた。 Aさんは、自分に充てられた席が後の人に回されないために、自分が発券した番号札を発券機に受信させなければならなかった。 しかし、受信機は発券機に二つあり、受付開始を告げるものと、空席に応じるものと、それぞれ目的に合わせて来客者が自己判断して受信させなければならない。 すなわち、選択を誤っても発券機は来客者に「受信機が違います」とか、内部で自己完結してエラーを補完するなどして人を助けない。「恐れ入りますが後の方を案内します」と告げてミス者を無人と同様の扱いにして見放してしまうのである。 そんなとき、Aさんの後ろで待ち合い席に座っていたBさんが、Aさんに対して、正当な受信機を指差し、「こっちに当てます」的な声掛けをした。そうしてAさんに座席が与えられ、Bさんに礼を言い、奥へ進んで行った。 待ち順は、Aさん、Bさん、私であった。 Bさんは私よりもAさんのそばにいた。Bさんに声掛けされなかったらAさんは後回しどころか受付自体を廃番にされるところであった。私はBさんよりも遠くに立っていて、二人の子供をなだめていたために自由が利かなかったのでBさんの行動に心で拍手するしかなかった。 Aさんがシステムに置き去られても、Bさんや私に順位が早く回って来たかもしれない。しかしBさんはAさんを支援したのだ。 この空間で、その後食べた寿司の味わいがアップしたのは私と誰だったろうか。