今では唐津市内となる浜崎の諏訪神社は、海岸近くに東を向く配置。参拝者は西に向かって拝むことになるから、西方浄土の発想すなわち仏教の影響下にありそうだが、別当寺らしきものも特に見当たらない。 それが何故、諏訪大明神を祀るのか。ご由緒は

御祭神 建御名方命 天照大神 諏訪前命 延歴三年甲子十月二十七日御鎮座。宣化天皇の御代大伴狭手彦、新羅征伐戦勝祈願のため勧請せり。 特別由緒 昔本朝鷹狩りを知らず。韓人斎来此の地に鷹を持ち来りて朝廷に献らんと請う。勅使諏訪の前、此の松浦の社頭にて鷹を受け取り諏訪大神の愛を給う所となる。 或る時神鷹三本松と言える畠の中にて蝮の害にあう。大神怒り給い此の地より蝮を拂い除け給う。 諏訪の前は責任を感じ自害し、郷人その徳を慕い合祀す。斎来も此の地に客死す。末社に祭れり。田畠に胡麻、小豆、麻を作れり。故に此の地に此の三つを作らず。 古来より社前に詣り神砂を乞いて蝮除の護符とす。

というのだが。水神であり龍蛇神とも言われる諏訪大明神が、自らの分身であり使者である蛇を排除するのは、ちょっと違う気がする。 見た所、当社は鷹の神体や鷹羽紋や鷹社、鷹の爪に見立てた神木など、様々な形で鷹を祀る社であり、鷹羽（田川）の神すなわち高木神に由来するものではないか。だからこそダイエーホークスとも付き合いがある訳で。祀り換えされたのか。あるいは諏訪流鷹術を伝えるものか。 そもそも由来にも、諏訪大明神のことは出てこず、諏訪姫の話ばかり。スワ姫って語感は佐用姫と似ているので、関係者なのだろうか。他に諏訪姫の名を見ないし。 延暦三（784）年は長岡京遷都の年で、日本書紀に拠ると鷹狩りは仁德天皇43（355）年に始めているし、大伴連狹手彥の名は宣化天皇2（537）年と欽明天皇23（562）年に出てくるし、庭園にあるのが古墳なら遅くても7世紀末であろうし、時代が合わないのは別人の話に有名人を借りたものか。 建御名方命の武勇を称える一般的な諏訪神社とは、どこか違った印象なのだけど、古墳時代から鎮座する重要な社であるに変わりはない。

境内社の祇園社は、四方の基礎を神官が支える。これはヒンズーのローカパーラ、その変形だと思う。神仏習合の典型「祇園精舎の守護神」祇園神に相応しい造りではある。