東郷平八郎元帥の別荘跡に建てられた日蓮宗の寺院で、山号は聖将山。そこはかとなくただよう中二臭が素敵です。 東京都下ではいち早く見ごろを迎える枝垂桜の名所であり、山門は黒澤明の映画「羅生門」に登場する羅生門のモデルと言われています。質実剛健を形にしたような荘厳かつ重厚な造りで、無用の装飾など一切ないものの、実に見ごたえがあります。ただ、やはり参拝するなら枝垂桜の見頃こそがお勧めです。武骨な山門と華麗な枝垂桜の対照は、時を忘れて見入ってしまうほどの美しさです。出店とかそういうのはないので、純粋に桜と建物のみを楽しめます。

東郷寺は京王電鉄多磨霊園駅から歩いて五分ほどのところにあります。日蓮宗寺院で桜の名所と言えば、身延山久遠寺、中山法華経寺などと共に、神代桜の大津山実相寺が想起されますが、いずれの寺院も観光客ウエルカムなのに対して、ここは「桜を見るのは勝手だが、檀家衆の邪魔はすんなよ」な雰囲気です。衆生が仏の教えにふれる機会をお寺が制限しているようで残念なものの、先に挙げた実相寺でも神代桜にカメラをむけてパシャパシャして、本堂には見向きもせずに帰るだけの凡俗どもがあまりに多く、寺院が敷居をあげるのも致し方ないように思えます。 山門以外の建物はぶっちゃけ普通ですが、日蓮宗の寺院らしく境内は丹念に整えられています。枝垂桜目当てで訪れたとしても、本堂に向けて合掌礼拝されることをお勧めします。

評価は平時で★三つ、枝垂桜の見頃なら★四つです。