【追憶の軌跡】悲愴なる思い出が蘇る熱鍋スープカレー。
四季の目まぐるしい移ろいの中でも、9月の札幌は最も美しい。 新緑が俄に朱色を帯び、それを称える日光の甘美なほどの優しさは、一気に寒くなる前の麗しい罪だ。
煌めく陽射しの誘惑に、過去の記憶を辿った。 豊平川を挟み、住宅街の密集したエリアに足を向けた。 古びたビルの奇怪な趣き、賃貸住宅の無機質な表情。 数十年という経年を帯びながらも、さほど変化のない街の様相に、ある種不吉な斜陽に震えた。
昼はとうに過ぎていた。 午後というよりも夕日のような太陽が空腹の寂しさを誘った。 昔の記憶を頼って歩いた。 うら寂しい住宅街を通り過ぎた時、スープカレーの看板に出会うことができた。 “こんな店構えだったろうか?” 現在と過去の隔たりに心なしか狼狽した。 記憶とは頼りにならないものである。
この店を初めて訪れたのは、おそらくオープン直後という記憶がある。 雪が深く、異様に寒い正月休みの夜に襲来した空腹。 どうしようもない絶望感の中で見出したスープカレーの温もり… 店内に入ると、当時の記憶の断片が次第に蘇り始めた。 律儀な店長らしき男性スタッフに「季節の野菜カレー、4番(カラ辛)、ライスL(250グラム)」を伝えると、季節の野菜カレーは他のメニューよりも時間を要すると説明された。 もちろんそれに肯んじた。 カフェのような小洒落た店内に身を浸しながら、再び過去の記憶をめくった。 敢えて言えば、このエリアでの暮らしは砂を泥で飲む日々だった。 ブラックもコンプラインスもなく、ひたすら目の前の案件をこなすことに明け暮れた。 深夜、豊平川に架かる橋をサンドイッチとビールで渡った日々。 豊平川をハドソン川に見立て、ニューヨークのパワーエリートだと自らを偽って奮闘した日を思い出していると、土鍋で煮立ったスープカレーが到来した。 薫り高いスープカレーが豊かな彩りの野菜とともに煮えたぎる。 熱さにまみれてスープを啜った。 思ったよりも辛さはないがコク深い。 美しい野菜たちは辛さに抗うようにそれぞれが味が深い。 硬めに仕上がったターメリックライスとの相性もバランスに配慮した食感だった。 食べ進める程に、過去の記憶にない味わいが押し寄せるばかりだ。 それも仕方あるまい。 長い空白が埋まることがないままに食べ終えた。
止まることを忘れた汗も、豊平川に吹く風を浴びると快い。 当時の砂を泥で飲む日々も...
Read moreI'm very picky and usually not very easily satisfied, but i have to say that the guy is making one o f the best soup curry in Sapporo. While it might be true that sometime you will have to wait longer than expected it is worth the wait. Good food takes...
Read moreローストチキンと野菜のカレー ¥1,480- トッピング 舞茸...
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