『超人クブシロ』 鳥取へ行った際、遅めの昼食に伺ったのがこちらのお店。 お寿司屋さんだから、レビューを読む人の関心事は、寿司のおいしさが主だろう。 それについては他の方のレビューに譲りたい。

今回私が書きたいのは、このお店で働く、ある人物についてなのである。

このお店は回転寿司だから一応レーンが回っている。 その外側に客席、内側にスタッフさんという、よくある構造だ。 私が訪れたのは、ピークから大きく外れた時間帯だったが、それでも店内はほぼ満席で大人気だ。 そういった状況で2名のスタッフさんが場を捌いていた。 満席ゆえ、とても忙しそうである。 人気店だから、常時こんな感じなのだろう。 その環境が彼らをそうさせるのか、二人とも働きぶりが非常に素晴らしい。

「二人とも」なのだが、特にそのうちのお一人。 名札でお名前を確認した方「久布白さん」は、圧巻だった。 このレビューは、ハイパー寿司男『超人クブシロ』について書くものである。

このお店は回転寿司と言えど、レーンから取る人は稀で、ほとんどの人が食べたいものをその都度注文している。 人気店で、こんな状況だから、クブシロさんもしょっちゅう呼ばれる。 その際のクブシロさんの動きは、最早ダンスのよう。 華麗なステップで、跳ねるように動くのだ。 それはもう、ある種のエンターテイメントと呼べそうなものだ。 このクブシロダンスショーと共に、なぜか彼は調理の一部も担っている。 寿司ネタのひとつ、たまご焼きである。

卵を割り、解きほぐし、ダシや調味料と調合して、ガスコンロの前に立って焼き始めるわけだが、その途中でも容赦なく客のオーダーが入る。 そうすれば、彼は焼きかけの玉子焼き鍋を持ったまま、クブシロステップで客席へ向かうのだ。 そこでオーダーを聞き、入力端末を操作したりの付随作業を終えた後に、タマゴ焼きに戻る。 ひとつの玉子焼きを焼き上げるまでに、何度か呼ばれることも珍しくない。 あなたは、調理器具を携えたまま、客席へオーダー取りに華麗なステップで向かう飲食店スタッフを、他に見たことがあるだろうか。 正に八面六臂の大活躍である。

そんな彼には目が離せない。 釘付けである。 釘付けだから、あることに気づいた。 それは、クブシロには笑顔が無いことだ。 ひたすら無表情なので心情も読めないわけだが、この素晴らしい働きぶりが、彼が仕事を楽しんでいるからこそ、であると良いのだが。

一般的な回転寿司とほとんど変わらない価格なのに、断然に美味しい。 それゆえに大人気のお店だ。 訪れた際には、美味しいお寿司と共にクブシロステップを堪能することを忘れないで欲しい。