お盆が過ぎ、空気はまだ熱を帯びていた。雲ひとつない青空の下、都内を抜け土浦へ車を走らせる。夕暮れが街をオレンジ色に染めるころ、路面に反射する光が眩しく、窓越しの熱気が肌を刺す。夏の名残と日常が交錯する、この時間の静けさに、ふと息を呑んだ。
「よし町」は、土浦の街にひっそりと佇む完全予約制の日本料理店だ。 供されるのは会席や懐石料理。その一皿には、茨城という土地そのものが映し出される。山、川、海、湖。四方から集まる自然の恵みを見極めるため、料理人・木村英明氏は車を走らせ、生産者と対話を重ねる。百数十キロの道程も、旬を掴むための必然である。八代目として暖簾を継ぐ彼が大切にするのは、素材の声を聴き、その一瞬を料理に託すこと。 霞ヶ浦の鯉を例にとれば、洗いとして涼やかに供することもあれば、酢味噌と合わせて季節の趣を添えることもある。調理法は決して固定されず、むしろ変化を許すことで素材の生命を浮かび上がらせる。店内は格式を備えつつも、肩肘を張らせない落ち着きに満ちている。個室や座敷も整えられ、静かに語らう場にも、大切な宴にもふさわしい。
こちらのお店は、2025年食べログの百名店とBRONZEを獲得し、その実力を証明した。 一皿一皿に土地の記憶と旬の息吹を込め、素材の声を聴きながら料理を生み出す、木村英明氏の手腕が評価され、地域の食材の普及や食文化の発展に貢献した現役料理人として、名誉ある料理マスターズにも選出された。 何とも期待が高まるお店である。
その日は「うめ」の名が付いた個室に通していただき、以下のコースをいただいた。
●茨木テロワールコース
~祝肴~ ・冷し薄蒸し白魚餡 (小沼水産霞ヶ浦 白魚、トマト、胡瓜、モロヘイヤ) 透き通る白魚の餡に、夏野菜が軽やかな彩りを添える。涼感と滋味が交わり、舌の上で清流のようにさらりと過ぎていく一皿。
~前菜~ ・紅ひゆな ・オクラ ・ゴーヤ ・新連根 ・パプリカ ・冬瓜 ・瓜ゼリー酢 ・つるむらさき ・とうもろこしかき揚 九つの小皿に並ぶのは、夏野菜の持つ瑞々しさを最大限に引き出した前菜の競演。紅ひゆなや新れんこんは爽快な歯ざわりを、瓜ゼリー酢やとうもろこしかき揚は遊び心ある軽やかさを放つ。見目麗しく、涼やかな宴の序章だ。
~小吸物~ ・スッポン(霞ヶ浦産 スッポン、長葱) 霞ヶ浦産スッポンの滋養深い旨みに長葱の香りが寄り添う。澄んだ吸物ながら力強さを秘め、体の芯に静かに火を灯すような一杯。
~造り~ ・常磐沖産 穴子 ・常磐沖産 ももいろ北寄貝 鶴の器に映える穴子は驚くほど繊細で、舌の上でふわりとほどける。また、ももいろ北寄貝は甘みが寄り添い、海の滋味が優雅に調和する。
~焼物~ ・天然鰻白焼(斎藤川魚店 霞ヶ浦 鰻) 霞ヶ浦の天然鰻を白焼に仕立てれば、香ばしさの奥から野趣あふれる旨みが溢れ出す。添えられた杏の甘酸っぱさが清涼な余白を描き、鰻の力強さを一層際立たせてくれる。
~強肴~ ・ホロホロ鳥 (ジャフラトレーディング かすみがうら市 もも肉・胸肉) かすみがうらの大地で育ったホロホロ鳥は、もも肉の濃厚な旨みと胸肉の繊細な香りが対をなし、一口ごとに表情を変える。滋味と気品が同居する、堂々たる強肴だ。
~揚物~ ・鯉香味ソース (山野水産霞ヶ浦 鯉、パプリカ、長葱、オクラ、ズッキーニ) 一週間かけて泥を抜いた鯉は驚くほど澄んだ味わい。香味ソースが軽やかに寄り添い、パプリカやオクラの彩りが爽やかな余韻を添える。夏にこそ映える揚物だ。
~煮物~ ・賀茂茄子煮卸し (大竹スイカ農園 賀茂茄子、大根卸、生姜、旨出汁) 瑞々しい賀茂茄子が旨出汁をまとい、大根卸と生姜が軽やかな切れ味を添える。滋味深さと清涼感が共鳴する、夏の煮物の極み。
~食事~ ・冷や汁御飯 (土浦市 新活地区産特選コシヒカリ、茄子、胡瓜、茗荷、香の物) 特選コシヒカリが、茄子や胡瓜、茗荷の爽やかな風味に包まれ、冷や汁の清冽な旨みと絡み合う。香の物のほのかな塩気が全体を引き締め、食卓に涼をもたらす一膳。
~甘味~ ・梅ゼリー(土浦産 南高梅) ・梨(外塚農園...
Read more茨城県土浦市にある日本料理のお店「よし町」。食べ友にお誘いいただき、ずっと行きたいと思っていたお店にお邪魔することができました。土浦市はあまり馴染みがなく、あまり足を踏み入れない地域で、駅から離れた住宅街にお店があるのだろうかと心配になりながらお店に向かいました。 お店に到着し車を停め、店内へ入っていくと女将さんが迎えてくれて、2階の個室へと案内してくれました。今日はどんな料理が味わえるのだろうとドキドキしながら足を進めます。今回はお誘いしてくださった食べ友が、過去に食べて美味しかった料理を中心にコースを組んでくださったようです。
○神無月御献立 ①前菜(秋刀魚燻製、あけび味噌、かます棒寿司、身巻き唐墨、鴨生ハム、キャベツ煮浸し、鯉南蛮漬け) ②天然バカマツタケにおお吸い物 ③お造り(常磐沖産穴子、大津港産太刀魚炙り) ④和歌山産子持ち鮎油煮焼き ⑤天然みずの実と木耳の煮浸し ⑥茄子田楽(新活産緑茄子、自家製味噌、鶏肉、アメリカウラベニイリガワリ、チチタケ、ヤマドリタケ) ⑦冷やし煮物(南瓜、トマト、オクラ、子芋、打ち茗荷、胡麻だれ) ⑧久慈浜産目光唐揚げ ⑨天然茸みぞれ和え(アミタケ、ホウキタケ、ショウゲンジ) ⑩方波見牧場デュロック種 豚二種炭焼き(味噌焼き&塩焼き) ⑪お食事(天然茸混ぜご飯(マイタケ、ヤマドリタケ、マスタケ、サクラシメジ)、味噌汁(あおさ)、香の物(胡瓜と蕪)) ⑫方波見牧場デュロック種...
Read more食べログの点数が茨城県内で2位と言われる「よし町」の会食があるとのことで参加させていただきました。
和食の高級料理なのでこじんまりしていると思って行ってみると大きな料亭で同じフロアでは大人数の会食もしてました。
私達は9名で個室でコの字になってのお食事。 今回は秋ならではの茸のテロワールコースをいただきました。
一品一品がとても丁寧に作られており、なんとお刺身も茨城県産で、えんがわもブリッブリでした。
特に美味しかったのは茸の炊き込みご飯。 8種類の茸が入っており、終盤にもかかわらずおかわりまでしてしまいました。
まさに茸に始まり茸に終わる、最高のコースでした!
【茸のテロワールコース】 ◯光付 すっぽん薄蒸し(霞ヶ浦産スッポン) ◯前菜 辛子茄子、鯖寿司、素麺胡瓜、あけび味噌、柿と栗の白あえ、小芋、しその穂オクラ、銀杏 ◯小吸物 猪真丈と天然茸、ヤマドリタケ、ムキタケ、ハナイグチ、コウタケ ◯造り 常磐沖産平目えんがわ 常磐沖産太刀魚 ◯焼物 那珂川産天然鮎の油煮焼 ◯中皿 常磐沖産伊勢海老天然茸ソース、アカヤマドリタケ ◯八寸 天然ナメコみぞれ和え、牛すじとホウキタケ、タマゴタケ浸し、アミタケ胡麻塩和え ◯強肴 猿島郡堺町塚原牧場の梅山豚と天然舞茸 ◯止肴 土浦産翡翠茄子の茄子田楽天然舞茸味噌、チタケ、ヒラタケ ◯食事 天然舞茸御飯 アカヤマドリタケ、ハナビラタケ、コウタケ、キクラゲ、ホウキタケ、ハツタケ、マスタケ、マイタケ ◯甘味 ほうじ茶ゼリー 茨城...
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