かつての絹糸工場の建物を活用した博物館である。運営する片倉工業は長野県発祥で、最盛期には我が国の代表的な近代化遺産、富岡製糸場を取得し、富岡市に寄附する近年まで所有していた。時代の変化に伴い、製糸業はここ熊谷工場を最後に歴史的役目を終え、会社は広大な土地を活用した商業施設の運営や医薬品製造に構造転換した。さいたま新都心にある大規模商業施設コクーンシティ(「コクーン」は祖業を彷彿とさせる「繭」の意である)は片倉工業の運営である。 ここ、片倉シルク記念館は、最後の製糸工場であった熊谷工場跡にあり、ショッピングセンターの片隅にひっそりと開館している。広さに比べて内容が非常に充実しており、見学時間はたっぷり2時間をみた方がよい。
記念館は2棟から成る。主棟1階では実際の工程順に並べられた製糸機械を見ながら、生糸の製造方法を学ぶことができる。数ある工程のそれぞれで、成果物の品質を向上させる工夫が施されていることがわかる。 2階に上がると、技術を駆使した品質管理や出荷時の美しい商標、片倉工業の歴史年表などが展示されている。2階の展示で特色的なのは、当時の人々の暮らしである。工場内には寮、学校、診療所、余暇施設が設けられ、従業員一同(工場長など経営側含む)で年中行事を行うなど、この工場が単なる職場にとどまらない生活の場であったことがうかがえた。こうした拡大家族的な工場運営には光だけでなく影もあったろうが、従業員にとっては社会そのものであったことは疑いもなく、当時の生活の喜怒哀楽に思いを馳せ、胸が熱くなった。 もう一つの棟では、繭ができるまでの工程、養蚕にスポットを当てた展示を行っている。
現在、片倉工業は別ドメインで事業を展開しているが、こうして祖業を顕彰する取り組みは立派である...
Read more無料であるのが心苦しいぐらいの素晴らしい資料館です。
写真撮影禁止と看板に書かれていましたが、知らずに受付の方に伺ったら、気にせずに撮影OKですよと仰って頂きました。有難うございます!
イオンの片隅にあります。 ここのイオンは、片倉工業の最後の製糸工場だった熊谷工場の跡地を利用しており、繭倉庫を記念館へと改装しました。 近代化産業遺産にも認定されています。
戦前の大財閥だった片倉財閥は、座繰式繰糸機をいち早く導入して大量生産体制の製糸業で財を成しました。 ピークでは日本のみならず世界各地で62ヶ所もの製糸場を保有していました。 また、富岡製糸場(いまや世界遺産!)の最後のオーナーとしても名が知られています。
記念館に入ると、製糸に使用される機械が多数あると共に、その工程が詳しく説明されており、とても興味深い内容でした。 当然原料となる蚕と養蚕についても丁寧な説明があり(カイコは完全に人工的に飼育された家畜であり、自然界にはいないんですって!)、これまでは「カイコって蛾の幼虫でしょ。ちょっと...」と、引き気味でしたが、最後は「可愛いかも...」と思えるまでに! (歴代皇后さまも皇居で養蚕してるぐらいだしね)
最後にお土産に本物の繭を頂きました。振るとカラカラと乾いた音がとても心地よいです(中身を考えなければ、ですが)。
今度、シルク製品でも買ってみようかしら、と思えるほど、絹について親しみが持てました(って...
Read more世界遺産に登録されたことで、富岡製糸場が注目されていますが、製糸場があれだけの規模で残ったということは、奇跡に近い・・・あるいはそれにかかわった人々や企業の志の賜物であったろうと思います。 それまで官営だった富岡製糸場を1939年に引き受け、その後長きに渡って所有し、2005年に富岡市に寄贈した片倉工業に敬意を表して、その資料館に行ってきました。(2014年5月に訪問) 片倉シルク記念館は熊谷駅の北、中山道17号線と秩父方面からの国号140号線が交差する近くの、イオン熊谷店の片隅にあります・・・正しくはかつての片倉工業の熊谷工場跡地がイオンになっているということで、2棟の繭を貯蔵した木造の巨大な倉庫が残されており、その中に製糸機械等がディスプレイされていました。残念ながら撮影は禁止との事で写真がありませんが、養蚕から製糸の方法、工場での生活などが大変詳しくボリュームたっぷりに展示されていました。ディスプレイの手法、照明なども洗練されていて・・・ああ、写真を撮りたかった。 結局1時間以上も資料を拝見しました(無料です。さらにイオン駐車場も3時間無料でした)。背の高い木造倉庫ですが、中は乾いた松系の...
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