【平成29年12月2日訪問】 開店直後の10時過ぎに訪れました。食事時には少し早いですが他の客が2～3組いました。

まず、ざるそば大盛りを頂きました。 地元美山で採れた蕎麦を、美山の水で仕込んだ新蕎麦十割そばです。 蕎麦切りは星の飛ぶ細切り仕様で、口に入れて噛んでみると如何にも新蕎麦らしい豊かな風味が鼻腔を駆け回ります。美山の個性を感じる仄かに甘い蕎麦の香りです。とても好印象です。蕎麦切りはコシに優れ噛みごたえ十分で弾力は噛みやすい程よい弾力です。如何にも十割蕎麦と言った、王道の蕎麦切りだと感じました。但し水切りが少し甘く、蕎麦切りに少し水か残っており、食事最後のあたりは蕎麦つゆが薄まっていました。

蕎麦つゆは、当初訪問前は、観光地の蕎麦店ということもありあまり期待せず、多分西日本の傾向的な甘めの蕎麦つゆかな、と想像していましたが、これは良い意味で期待を裏切られるとても素晴らしい蕎麦つゆでした。甘くもなく塩辛くもなく、非常にバランスの良い塩梅で、かつ鰹風味がビシッときまり、更に塩加減も良く非常に爽やかで味わい深い大人の味わいでした。なお、薬味は青葱と山葵でしたが、青葱は香りが強く青葱自体は素晴らしいものの、どうしても蕎麦の香りに勝ってしまうので、口に入れる量の微調整が必要です。山葵は天然摩り下ろしで、こちらも単独では優秀な山葵ですが、やはり蕎麦切りに勝ってしまいますので、微調整が必要です。ただしこの店の蕎麦が大変素晴らしいため、正直なところ、薬味は無くても十分以上に堪能できます。

蕎麦湯はややとろみのある灰白色のもの。蕎麦湯の器の底には湯がかれた蕎麦切りの微粒子が踊っています。 蕎麦湯の風味は蕎麦切り同様、蕎麦の甘い香りが全面に押し出され、かつ蕎麦の成分を余すところなく抱え込んだ蕎麦湯は上品なオーラを纏っています。無論、上品な味わいの蕎麦つゆとのマッチングは申し分無く、私がこれまで食してきた中でも最高レベルにあると言っても過言ではありません。

更に、地鶏せいろ蕎麦も頂きました。 一般的には鴨肉が使われることが多いですが、こちらは地元美山の地鶏を使用。蕎麦切りの評価はざるそばと同様ですが、地鶏が本当に感動的。柔らかすぎず、正直なところ固めの肉ですが、これが素晴らしい。噛みごたえは十二分で、噛めば噛むほど如何にも地鶏、という風味が口腔内に立ち込め、同時に官能的な鶏の出汁味が滲み出て、頷かざるを得ない素晴らしいものでした。

観光地の蕎麦店、という当初の偏見は見事になくなり、このお店は優秀な蕎麦店である、と言って間違いはありません。

１点気をつけたいのは、この店舗では手打ち十割蕎麦と、手打ちではない蕎麦が並行してメニューにありますので、ご注文の際は間違えないように気をつけることです。