稲穂の豊かな実りも刈り取られ、寒々としてきた今日この頃。夜に東口から歩いているといつも見かける看板がひとつ。古くからの友人曰く、秋田市で一番味が濃いかもしれない店。この寒さも相まって、濃い味が恋しくなっていたこともあり入店。 メニュー表があまりに雑多でこのとき私は初めてスマートフォンを触る人々の如く戸惑っていただろう。そんな戸惑いながら発券したものは嵐げんこつラーメン塩。席につくとまず目に入るのが「旨い水」とかかれたピッチャー。流石の私でもこれは水道水だと分かる。旨いわけがなかろう。そう思っていた。 ラーメンが届いた。いざ対面してみると値段の割には貧相なラーメンだなと思った。いつ見ても特筆すべき点は特にないだろう。ここでニンニクも頼めることに気づいた私はニンニクを「一人前」頼んだ。ラーメン本来も味わいたかったが何故か自分の勘がニンニクを入れてから食べろと警鐘を鳴らしていた。 ニンニクを入れた後、一口。 ！！！？？？！？？！？なんだこれは！！！！不味い！！！！！味が飽和している！！！？？？？！？ ──────だが！！！！美味いッ！！！！あまりの旨味成分の濃さに舌が、脳が歓喜の渦に包まれている。脳には血液脳関門と呼ばれ、異物を排除する機構があるが、それが易々と破壊され、脳が旨味成分で蹂躙されていた。近くにある水を飲む。これは…、旨すぎる。余りの旨味の濃度で蹂躙され尽くした舌が狂喜乱舞している。ただの「旨い水」ではない、生命の泉といっても過言ではない。そして、気づくと私の体を蹂躙し尽くした邪智暴虐のラーメンは居なくなり、それと相なす生命の泉は枯れ果てていた。 食べ終わり家に帰り暫くすると襲ってくる腹痛。そうかニンニクを入れすぎたのか。いやあれほど味の濃いものを食べたからか。真偽は分からない。ただこの時を占める気持ちは、なぜ全て食べてしまったのかという後悔。自身の健康を考えて、もう行くことはないと思っていた。 ２週間後、友人から連絡がきた。ラーメン花月いこうぜ、塩よりも美味いラーメンがある。仕方ない。せっかく誘われたならいってやるか。