北海道の記憶と未来が交差する場所 〜 赤れんが庁舎とレストラン ∴ HOUSE.H
歴史が息づく、赤れんがの記憶 札幌市中央区に静かに佇む、北海道庁旧本庁舎(通称:赤れんが庁舎)。 1888年(明治21年)に竣工され、 アメリカ風ネオ・バロック様式を基調に設計されたこの建築は、 現代の喧騒を忘れさせるような、重厚で静謐な美しさを湛えています。
およそ250万個の赤れんがが積み上げられ、 中央の八角塔はまるで時の見張りのように、 北海道開拓の歴史を見守ってきました。
かつて開拓使本庁舎として始まり、 昭和以降も長らく道政の中心として 機能していたこの建物は、 1970年には国指定重要文化財に登録。 そして近年、約5年の大規模な保存修理工事を経て、 2025年7月25日の夏、その姿を新たに蘇らせたのでした。
その再開と共に誕生したのが、 今回訪れたレストラン 【HOUSE.H(ハウスエイチ)】です。
■ HOUSE.H という、もう一つの「北海道の記憶の筺」
このレストランは、単なる飲食空間ではありません。 赤れんがの記憶を受け継ぎ、「北海道という時間」を 料理で語る、 新しい歴史の始まりであり、もう一つの物語の空間です。
天井は高く、白壁と木材を基調としたインテリアは、 重厚でありながら柔らかく、自然光が差し込むたびに陰影が美しく揺らぎます。 大きな窓からは、改修で生まれ変わった「道庁赤れんが庭園」が広がり、 季節の色彩がそのままレストランの景色の一部として溶け込みます。
この空間は、北海道が育んだ素材と記憶を“層”として 味わうというコンセプトを根幹に据えています。 朝は陽の光とともに穏やかに、夜は重厚な照明とともにしっとりと。 朝食からディナーまでのオールデイダイニング。 時間帯によって異なる顔を見せる“時間の演出”も魅力です。
■ 北のテロワールを、一皿に織り込む技
ここで提供される料理はすべて、 北海道の食材・生産者・四季に対する敬意と、 「記憶に残る味」を追求する哲学が込められています。
鹿や牛、道産野菜やチーズといった素材そのものの力を引き出すと同時に、 そこに複雑で多層的なソースや仕立てを合わせることで、 北海道という土地の“風土の層”を舌で感じ取れるような構成に。
赤れんが庁舎の時間に浮かぶ、食の情景 〜HOUSE.Hのアラカルトの料理たち〜
■ 土のサラダ〜ビーツのピューレ〜
大地の野菜をそのまま掬い上げたような一皿です。 そこに芽吹くのは、調理されたアスパラ、南瓜、ズッキーニたち。 キヌアが風に舞う種のように軽やかに、その香りは夏の雨を思わせます。 野菜が語るのは、北海道の大地で育った記憶と、今この瞬間の瑞々しさ。
■ 季節野菜とうずらのピクルス
皿の上に盛り付けられた小さな四季の断片。 人参の黄、パプリカの赤、うずらの卵の白、胡瓜の緑 スパイスがゆっくりと花開くように香り、 遠い夏の祭囃子が聞こえてきそうな、郷愁の優しい酸味。
■ チーズ盛り合わせ
北の風が育てた乳の結晶、雪の記憶をまとった白い宝石たち。 青カビが描くのは熟成という静かな詩 ハードチーズは時間の重みを語り、 ブラウンチーズはキャラメルの味色。 ミモレットは若き牧草の香りを乗せる。 一口ごとに、牧場の朝霧や、乳搾りの温もりがそっと舌を撫でるのでした。
■ 発酵バター香る 北海道産フライドポテト
黄金の皮の奥に、芋の記憶がまだ眠っている。 サクサクとした衣を抜けると現れるのは、 ねっとりとした甘みと、発酵の魔法がかけられたバターの芳香。 まるで農家の納屋で拾ったばかりの、温かな夕焼けをかじっているかのようです。
■ 蝦夷鹿肉のハンバーグ
「蝦夷鹿肉のハンバーグ」は、ただのジビエ料理ではなく、 野生と調和、粗挽きの力強さとソースの熟成感感じさせるような、 北海道の「山の物語」が描かれたような一皿でした。 粗挽きの肉は野生の息吹をそのままに残し、 噛み締めるたびに、静寂な雪原を駆けた時間が舌にほどけます。 乗せられ添えたポテトフライは太陽の記憶、 オニオンの甘みは北の大地の余韻のようです。
■ 北海道牛のロースト〜マディラソースと共に〜
ほんのり赤味ある断面に、肉の年輪が認められています。 マディラ酒のソースはレッドアンバーの瀞み 甘くも切ない、遥かポルトガルの風が北の肉にそっと触れる。 静かに火入れされた牛肉は、語りすぎず、雄弁すぎず、 ただしなやかに、時の重みだけをその身に宿すのです。
■ 蝦夷鹿と香味野菜のトマトラグーパスタ
鹿の記憶と森の香りが溶け合った味と食感の旋律は、 北海道の豊かな森と大地の息吹を思わせます。 野菜たちの甘みと旨みが奏でるソースは、トマトの陽だまり。 パスタは弾むような律動、噛むたびにその弾力がリズムを刻みます。 森と畑の香りを同時に纏い、噛み締めるたびに、 それはまるで、森の奥の小道を、記憶の鹿が駆け抜けていくような味。
■ 厳選したドリンクラインナップ
北海道の自然が凝縮されたようなクラフトジン、 ワイン、ウイスキーのセレクションも魅力的です。 「奥尻メルロー2021」や「山崎12年」など、 北海道と日本の風土が交差するラインナップが、 料理とのマリアージュをより深いものにしています。
響 JAPANESE HARMONY ハイボール フルーティーな風が舌先にふわりと触れ、 まるで桃色の夕暮れがグラスの中で踊っているかのよう。 その奥に、白檀や樽香がしなやかに寄り添い、 味の重なりが、まるで音楽のように広がっていきます。
奥尻メルロー 2021 冷たく閉じたボトルから、ゆっくりと立ち上がるハーブの香り。 若草が朝露に濡れる情景が広がり、 その奥から顔を出すのは、ベリーとミントの香りの幻影。 海風に育てられた葡萄が、奥尻の時を語るようです。
山崎 12年 オン・ザ・ロック 樽の中で眠った幾千の記憶が、氷のひとしずくで目覚めます。 シェリーの柔らかさとミズナラの木霊が折り重なり、 まるで、語られぬ物語を口にしているような奥深さ。 その余韻は、ずっと心に残り続ける夜の琥珀の輝きです。
■ 丁寧な接客と、オープン初日の揺らぎ
訪れたこの日は、グランドオープンを迎えたばかり。 スタッフの所作は非常に丁寧で、笑顔や言葉の選び方も自然。 一方で、まだ新人らしきスタッフの“緊張”も見られ、 一部オーダーが通らない場面もあり、デザートは心残りとなりました。 しかしそれすら、むしろ「生きた空間」である証のように思え、 この場所がこれからどのように成熟していくかが楽しみな一面でした。
■ 物語が宿るレストランという存在
赤れんが庁舎という「時間の記憶」と、 HOUSE.Hという「味の記憶」が静かに交わり、 訪れる人々の感覚と心を、そっと揺らすのです。
ここは観光名所ではなく、 「体験する詩」や「食べる建築」のような場なのかもしれません。
■...
Read more大正ロマンの雰囲気でこだわりの洋食をいただける 北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)内
訪問日 2025.8.8 北海道庁旧本庁舎(赤れんが庁舎)の改修工事も2025/7/25で終わり リニューアルオープンしました。 そんな中、1Fniオープンしたお店 【HOUSE.H】さん
様々な飲食を手掛ける【ノースグラフィック】さんの新店なので オープンをとても楽しみにしていました。
木とワインレッドの基調が素晴らしく 大正ロマンを感じさせる素敵な店内 落ち着いて食事が出来る雰囲気で自慢の洋食がいただけました。
色々食べたかったので アラカルト注文でいただきました。
■北海道産鶏レバーのパテ ※しっとりした口当たりで優しくて美味しいパテでした。
■蝦夷鹿肉のハンバーグ 山わさび ※肉々しくて食感が良く、これはおススメの逸品! 赤身の旨味が口に広がって赤ワインが進んじゃいました!
■北海道産牛ロースト マディラソース ※旨味と食感を楽しめるお肉でした。 他にも色々食べるならいいですが、少しお上品な量なので 男性はちょっと足りないかな?
■土のサラダ ※キアヌの上に道産の野菜が乗っています。 ビーツのソースでいただきます。
■北海道生乳のチーズペンネ ※濃いソースで量もあってパンチあります。 チーズもゴルゴンゾーラが入ってるので濃い目で美味しかったです。
■蝦夷鹿肉と香味野菜のトマトラグーパスタ ※面がもっちりしていて、トマトで煮込んだ香味野菜が 美味しくてボリュームもありました!
■北海道産サーモンの昆布〆とクリームチーズ ※鉄板の組み合わせですね!最高にマッチしてました!
■ハムの盛り合わせ ※3種のハムが盛り合わせになっていて お酒のおつまみには最高ですね~ この盛り合わせにクリームチーズが添えてあったら もっと美味しかったな~
■ドリンク...
Read more北海道の歴史を感じながら、堂々たる本物の洋館で、北海道素材を使用した洋食と非日常を楽しもう。
先日オープンした、異彩を放つ話題のレストランに @hoshi__dukiyo さんと訪問してみました。
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