▼多摩川と言えば、山梨県は大月市の北側にある丹波山の標高2000mから一気に138㎞の長さで東京湾に流れ込むため、暴れ川として有名です。太古の昔から何度も氾濫を繰り返し、流れを変える多摩川。 ▼古来からこの氾濫する多摩川で人間を助けてきたとされる生き物がいます。そう蛇です。特に白蛇の大蛇。 ▼氾濫で溺れそうになる人たちの前に白い布が投げられ、皆それに捕まって助かった。氾濫が終わると、その白い布は白蛇の姿になった。とか、白蛇が普通の蛇を沢山集め、決壊寸前の堤防に転がってきた岩か流木により開いた穴に蛇皆で頭を突っ込んで決壊を防いだ等、伝承には事欠きません。 ▼そんな多摩川の白蛇伝説は、流域のあちこちの神社に残っています。 ▼蛇だけに蛇足かもしれませんが、深大寺に祀っている深沙大王も白蛇の化身です。縁起絵巻にもとぐろを巻いて白い蛇が描かれています。多摩川の氾濫流域は広く、深大寺辺りまで避難を余技なくされた名残という説もあります。 ▼狛江は高麗（朝鮮）の渡来人が住んだ江（多摩川が江を形成した）なので「高麗江」なのですが、その渡来人も何度も多摩川の洪水にあっているのでしょうね。主に彼らは治水技術をこの多摩川に適用し、氾濫を食い止めようとして集められたようです。 ▼また、ご存知のように、日本が仏教を広めるのに彼ら渡来人の力を借りたことは有名です。深大寺という仏教寺院にも白蛇伝説が影響を与えたとすると、なまじ多摩川氾濫と白蛇の関係は伝説だけでは無いのかも知れません。ちなみに深大寺の縁起には、この渡来人の一人が深く関与しています。 ▼この祠、本当にこの地下に白蛇がいるのではないかと思わせる雰囲気が漂っていますし、近年、この祠の廻りをコンクリートで固めたところ、宮司の夢枕に白蛇が現れ、「息ができない」と訴えたという話もあります。（なので今は祠の廻りは土です。） ▼閑静な住宅街にひっそりと佇む祠、そこに多摩川洪水の守り神・白蛇が居ると思うと、日常の一角に古代からの悠久の歴史を感じることができますよ。