Minato City Local History Museum

「眩い輝きを放つ伝統とゆとりの街、白金台。 駅に直結した深い緑の奥に佇む感動を今、あなたの手に。」

と、マンションポエム調で書き出してみました。 普通に売出したら坪一千万円は下らないだろう超高級地に贅沢に建っています。そこらでコーヒーを飲むだけで1,000円は覚悟しなければならないのに、それがたった300円、しかも歴史的でシャレオツな建物で人も少なくゆっくりできるなんて、なんて素敵なデートコースなんでしょう。 正直、紹介するのが惜しいくらいですが、googlemapはポチッと押した人だけが見れる仕組みであり、この駄文をお読みの皆様はすでにここの存在をご存知ということですので、惜しむ必要はないですね。ハイ。

この建物を設計したのは、西新宿の安田火災ビルや東大安田講堂を始めとする東大の殆どの校舎を手掛けた内田祥三。 彼の作品は重甲な造りの中に縦のラインを強調した「内田ゴシック」として知られ、ここの隣りにある東大医科学研究所も彼の設計です。

1938年に国立公衆衛生院として建てられ、閉鎖後に港区が取得、2018年に郷土資料館としてリニューアルオープンしました。 中は郷土資料館の他にも図書室やミュージアムショップ、オーガニックな雰囲気溢れるカフェなども入っており、ゆったりとした時間が過ごせそうです。 また、講堂や宿泊室など、当時の施設がそのまま保存・公開されているのも見どころです。

郷土資料館の展示内容は、お約束通り縄文時代の貝塚からの出土品から江戸の町並みの広がり、明治以降の関東大震災や空襲といった一連の流れを、多数の解説パネルや展示品で説明しており、とても分かりやすいです。

さて、ここの建物は元々国立公衆衛生院だった、と書きましたが、それって何？と疑問になりますよね。

時は1923（大正12）年9月1日。関東大震災の発生直後にかの米ロックフェラー財団から日本政府に非公式の連絡がありました。 「震災により日本国民の公衆衛生の悪化を懸念する。ついては米国より公衆衛生の専門家の派遣ならびに公衆衛生の人材育成機関の設置を支援をする用意がある。」 これ、震災当日の話です。早っ！ そこから法令整備やら設計やら準備が始まり、開設したのは15年後の1938（昭和13）年。 もうすぐ太平洋戦争という不穏な時期でしたが、ロックフェラー財団は当時の約束を違えず、350万ドルもの資金拠出を実施しました。 昭和12年当時の物価は、白米10kgで2円50銭、ガソリン1㍑15銭、食パン1斤17銭、牛肉100g41銭など、ざっくり言って現在の1000分の1。また、当時の為替レートは100円=29ドルぐらいです。よって現在価値に直すと、約1,200億円の資金拠出となります。石油王スゲー。

すっかり金の話になってしまいました。 公衆衛生院の役割ですが、保健師の養成、研修センターであると共に、自らも公衆衛生に関する研究調査を行う、つまりは全国にある保健所の親玉みたいな存在でした。 現在は国立保健医療科学院として、埼玉県和光市に移転しています。 きっとコロナ対策で大忙しなんでしょうね。お察しします…。