この場所には室町時代から何がしらの要害はあったようですが、本格的に富山城が築かれたのは天文１２年(１５４３)の事です。当時越中は守護代の神保氏と椎名氏が勢力争いをしていました。富山城は西の神保氏が東の椎名氏の勢力圏に進出するための橋頭堡として築城されました。 富山城は神保氏が築城しましたが、永禄３年(1560年)には越中に侵攻してきた越後上杉氏のものとなり、天正10年（1582）には越中が織田氏の勢力圏となったことから富山城も織田氏に帰属しました。織田政権の元では佐々成政が越中を与えられ富山城を本拠地としました。 織田政権の崩壊後、中央で覇を握った豊臣氏は越中攻めを行い敵対した佐々成政を改易して越中国を前田家に与えました。富山城はその後、加賀前田家のものとなります。 前田家は富山城を初代藩主前田利長の隠居城としましたが、火災で消失ししばらく再建されることはありませんでした。 加賀藩2代藩主前田利常の時代に、富山藩10万石が支藩として成立したことにより再び富山城が整備され現在の形を整えるに至りました。ちなみに越中全体の石高は江戸期には53万石と言われています。富山藩が支配したのは越中国の一部でほとんどは本家の加賀藩に帰属しています。

富山城は神通川を背にした梯郭式平城です。城域は10万石の大名の居城としては大きいです。後ろ堅固な城ではありましたが、虎口の形状などをみてもそれほど守備力の大きなお城とは思えません。城の構造は殆どが土塁づくりで石垣は本丸の一部に使われているのみです。石垣の積み方も古い様式の野面積みが多いです。ただし大手門付近には巨大な鏡石が使われており目を引きます。天守台はありましたが、天守が築かれた記録はなく櫓の数もそれほど多くはなかったようです。富山藩は成立の過程で、本家から大勢の家臣を押し付けられ、越中国内でも肥沃な部分は本家が所持したままで、藩財政的にはかなり厳しい経営を強いられていたので、城郭整備に力を割く事が出来なかったのだと思われます。

現在の富山城址はあまり良い状況とは言えません。史跡としてですが大手門の有った場所に、史実に基づかないなんちゃって鉄筋コンクリート天守閣を立ててしまっています。土塁だった場所に石垣を作ったりもしています。 公園としても、市街地中心部にも関わらず、何も魅力的な物がないのでイベントの時以外には訪れる人もまばらな状況です。古い遊具とあまり綺麗でない日本庭園風の庭などが目につく程度です。

別に史実に基づいた再整備をする必要はありませんが、今現在訪れる人が楽しいと思えるような場所にはしてもらいたいと思います。 それと江戸期にあった富山城の姿を誤解させるような整備はやめてほしいと思います。地元の人でさえ富山城は天守閣のあった石垣作りのお城だと誤解していると思いますので。 今のなんちゃって天守閣が建てられた経緯などは噴飯ものだと思います。