柏に灯る、日本のテロワールを讃える至高の光。「オステリア レ テッレ」その才能の輝き
晩夏の候、千葉・柏の地に静かに佇む一軒の扉を開いた。そこは、食材の生命力が満ち溢れ、シェフの揺るぎない哲学が皿の上に表現される空間、「オステリア レ テッレ」。今宵、ここで体験したのは単なる食事ではない。日本の豊かな大地と海が育んだ旬の恵みを巡る、美しき物語であった。
供された「クラシックコース」は、シェフが地元を中心に日本全国の生産者と紡いできた絆の結晶だ。
序章は「自家製生ハムと小川さんの貴腐瓜」。熟成された生ハムの塩味と凝縮された旨みが、貴腐の名を冠する瓜の芳醇な香りと崇高な甘みによって、見事に昇華される。これから始まる美食の旅への期待が、静かに、しかし確実にかき立てられる一皿だ。
続く前菜は、鮮烈な色彩の絵画のようだった。「沖縄の本鮪」の艶やかな赤、「浅野さんのビーツ」の深い紫、そしてカボチャを思わせる「コリンキー」の明るい黄色。それぞれが持つ個性を、自家製の梅の穏やかな酸味と、アピオスの可憐な花が優しく束ねる。特筆すべきは添えられた胡瓜。力強い生命力を感じさせる無骨な姿そのままに、味わいは驚くほど濃く、瑞々しい。素材一つひとつが主役でありながら、完璧な調和を奏でている。
魚料理は「福岡のキジハタ」。丁寧に火入れされ、しっとりとほどける純白の身に、シェフは「茄子のカポナータ」を寄り添わせた。ケッパーの弾けるような風味と、日本みかんの爽やかな香りが、南イタリアの風情に和の魂を吹き込む。キジハタの上品な旨みが、一層深く、鮮やかに引き出されていた。
パスタは、この店の真骨頂を物語る。「自家製手打ちのフィットチーネ」は、その滑らかな舌触りと小麦の豊かな香りで、それ自体が完成された料理であることを主張する。そこに絡むのは、「岩手の短角牛」を惜しげもなく使った赤ワインのソース。力強い旨みとコクの波が押し寄せ、最後に振りかけられた稀少なチーズ「アルプスのバゴス」のナッティな熟成香が、味わいに圧倒的な奥行きを与えていた。これは、記憶に深く刻まれる一皿だ。
メインディッシュは、「藤原さんの安曇野放牧豚」。ストレスなく育った豚が持つ、清らかで甘い脂の旨み。その魅力を最大限に引き出すのは、日本の発酵文化の粋である「もろみのソース」。そして、驚くほど滑らかで粘りのある「きたあかり」のピューレが、すべてを優しく包み込む。大地の恵みへの感謝と、それを最高の形で届けんとする料理人の情熱が伝わる、感動的な一皿であった。
デザートは、夏の終わりの輝きを閉じ込めた宝石箱。「フロマージュブラン」のクリーミーなコクに、瑞々しい「桃のソース」。そして、キャンディのように甘いトマトが、意表を突くアクセントを加える。計算され尽くした甘みと酸味のバランスは、まさに至福。
締めくくりの「スペシャルティコーヒー」は、ラム酒の甘美な香りを纏い、最後の瞬間まで五感を満たしてくれる。共に供された小菓子、そして力強い風味の「今村さんの地粉の自家製酵母パン」に至るまで、シェフの美学は隅々にまで貫かれていた。
お連れ様が「このシェフは才能がある」と繰り返し称賛されたというが、それは当然の帰結であろう。彼の料理は、イタリアンの技法というキャンバスの上に、日本のテロワール(土地の個性)という名の絵の具で描かれた、唯一無二の芸術作品だ。
「オステリア レ...
Read moreカウンター席とテーブル席が数席のこじんまりとした店内、決して安くないお料理です。 でも最高のイタリアンでした。 特に感動したのは子供用に注文したパスタです。 ほんのり暖かくアルデンテに仕上がったパスタは出てきた瞬間から熱すぎず美味しくいただけました。感動は子供が食べず残った冷めてからも美味しくほんのりアルデンテを感じる計算され尽くされたものでした。 勿論他のコース料理も素材・美味しさがすべて調和されてました。 味は濃くないです。甘味・塩味・旨味・苦味全てが・・全てが調和しているという表現がピッタリです。
子供がいるとテーブルが一つしかない個室になるそうです。
また必ず伺いたいと思...
Read moreかなり腕の立つシェフが、隅々まで気を使って切り盛りしている。アシスト2人も無駄な動きがなく、見ていて惚れ惚れする。これで美味しくないわけがない。
で、料理は期待に違わぬもの。ランチのパスタコースにはサラダに魚料理までつく。パスタは女性にはちょうどいいのかもしれませんが、もう少しボリュームがあってもいいかも。 今度は夜、飲めるときに来てみたいと思った。
気になったのは、配膳された料理の説明が丁寧な、いや、丁寧すぎること。早く食べたいのに、お預けを食っているみたい。このような口コミには、料理の説明が全くなかった、という不満も目にするので中庸を保つのは難しい...
Read more