【人生最期の食事を求めて】老舗ロールキャベツシチューへの耽溺。
私は常々、人生最期の食事はシチューが良いと想い募っている。 そこに理屈などなく、この世から去ることを理解した上で最期に何を食べようか、という直感的な問いから見出した答えに過ぎない。 もっともなんらかの病状によって死が迫ってきたとしたら、その時はシチューどころか病院食もままならないはずである。 だからといって、自己の人生の終着を知らずして終わる突然死も不条理甚だしい。
学生時代から愛読していたフランスの小説家アルベール・カミュは“不条理”をテーマにした作品を発表し続け、不条理に反抗する人間をテーマに据えながら、46歳の若さで不慮の交通事故死でこの世を去った。 なんと皮肉なことであろう。 だからこそ、私もまた不条理に反抗して生きながらも、どこか不条理な死に怯えているのだ。
日曜日の午後の羽田空港ほど気が滅入る場所はない。 どこもかしこも混雑を極め、人の交錯の隙間を縫うことすら面倒で、しかも空腹を満たすための店もまた人だかりの様相だからである。 コロナ禍を乗り越え日常の光景が戻ってきたことは否定しないが、その日常がどこか所在なげな幻影のように見えて仕方なかった。
とまれ、レストランエリアに向かった。 午後とは言っても案の定、どの店も混雑を極めていた。 羽田空港で遅い昼食を摂るという目論見は失敗だと思った矢先、ロールキャベツシチューの名店が私の前に立ちはだかった。 新宿アカシア。 1963年の創業以来、愛され続けたロールキャベツシチューの名店が羽田空港第2ターミナルに存在していたことを知らなかった私は、声では現すことのできない驚嘆と歓喜を押し殺しながら店の前に佇んだ。 当然のように、入口のすぐ横の椅子には入店を待つ客が静かに座っていた。
男性スタッフの良く響く声音が辺りを支配した。 「メニューを見てお待ちください」 私の手にもメニュー表が渡された。
ロールキャベツシチューを軸にした多彩なメニューに、私はシチューの迷宮への一歩を踏み込もうとしていた。 すると、再び男性スタッフが店から現れると、 「何にされますか?」 と訪ねてきた。 「コロッケの2種盛りとロールキャベツシチューをお願いします」(1,530円) と直感的に応えた。 直感的でいいのだ、と私は言い終わった後も納得していた。 なぜなら、名物のロールキャベツシチューが組み合わされてさえいれば何を口走ろうとそれで良いのだから。
10分程待つと、食べ終えた客と入れ替わって店内に案内された。 左隣の若い男女の客はすでに黙々とロールキャベツシチューとライスを、右隣の男性客はロールキャベツシチューとオムライスを食していた。
すると、カウンター席の眼の前から女性スタッフがロールキャベツシチューとライスを差し出した。 見るからにくすんだ黄色がかったとろみのあるシチューを纏ったロールキャベツが現前している。 さほど間も空けることなく黒々としたソースを纏ったコロッケを載せたプレートが置かれた。 まずはシチューを一口啜ると、塩味の効いた味つけがライスを求めてやまない。 さらに、ロールキャベツにブラックペッパーをふりかけ、箸で引き裂くとしっかり煮込まれていながらも挽き肉が溢れ出し、まさしく新宿アカシアの真骨頂とでもいうべき味わいに、私は心躍りながらライスを頬張った。 ところが、コロッケもロールキャベツに劣らず静かな自己主張を放ちながら私を出迎えている。 歯切れ良く小気味良い咀嚼音が耳の奥底から脳に轟くと同時に、帆立の風合いがどこからともなく私の中に訪れた。
私はその時、ある疑念に襲われた。 『もしかしたら、これが最期の食事なのか?』と。 ロールキャベツシチューもコロッケも、それほどまでに私の体内を駆け巡り、私自身を生の終末へと急かしているとしか思えなかった。 だが、仕方あるまい。 この世は不条理に満ちているのだから。 たとえこの先、不慮の事故に遭遇したとしても、私は常に人生最期の意識で食事に接し続ける。 だからこそ、コロッケの2種盛りとロールキャベツシチューが繰り出すひと味ひと味を完食に至るまで集中し、堪能するまでのことだ。 フライトの時刻には充分...
Read more福岡から羽田へ帰着したのが夕方で中途半端な時間でしたが、珍しく腹が減っており空港で何か食いたいと思いこちらのお店へ。
店内は一見広く見えましたが、全面ガラス張りのトリック。アクリル板もありせせこましいカウンター席に陣取ります。椅子の下には荷物置き場もあり機能的。
アカシアの代名詞であるロールキャベツの入ったセット『極辛カレーライスとロールキャベツシチュー(¥1,350)』をオーダー。
作り置きのせいか、ものの1分くらいで登場。やはり空港だからか急いでいる方も多いスポットですので、びっくりするような速さでした。新宿本店だとこうは行きませんね。
ライス以外には大きめのロールキャベツが1皿、カレーは専用ポットで提供。いやなかなか豪華なディナーです。
ロールキャベツはアカシアの根幹料理ですので間違い無い味。柔らかいキャベツの中には肉々しいミンチ。ほのかな塩味が旨い!クリームシチュウほどしつこくなくさっぱりとした後味ですので遠慮なく飲み干します。
カレーは本格的なインド風でスパイシー。辛さはさほどでもありませんが、芳醇で複雑なスパイスの旨味がこれでもかと楽しめます。
浸かっている骨付きチキンは手に持って頂くしかないので抵抗がありますが、手が油まみれになるのと引き換えに、その辺のタンドリーチキンよか遥かに旨いスパイシーチキンが味わえます。
自分の場合、ライスを6:4の黄金比率に分けて二毛作に。、4はロールキャベツをアテに、6はカレーをアテに頂きました。
これだけの内容で1,350円は素晴らしい。ホームページを見ると、空港も外の価格と変わらないようです...
Read more(23年11月末)羽田空港の「アカシア」にレイトランチで出かけてきました。午後3時近くでもほぼ満席状態です。並んでいる間にメニューが渡され、入店後は待ち時間は短いです。
周りを見渡すと皆さん「ロールキャベツシチュー」を楽しんでいる様子ですが、今回は「極辛カレーライス」と「サラダ」を注文しました。
「極辛カレーライス」(ライスは半ライス指定。値段は同じ)は、メニューの響きや色見から「辛く」見えますが、カレーソースからはホールカルダモンの芳香がにじみ出るぐらいにスパイシー。辛さは強烈というほどではありません。それこそ「旨辛」レベルでしょうか。
具の主役は「鶏の手羽元2本」。スプーンを当てただけで、肉片が剥がれるほどのていねいな仕込みです。スパイシーなカレーとの相性も良く、おいしく完食です。
サイドメニューで注文した「サラダ」は一見普通な感じですが、「アカシア」らしさは、添えられる「アップルベースのドレッシング」にあります。酸味はやや強めですが、食した後からアップルの甘さや風味が口中に広がります。
また、今回は未食ですが、以前は羽田空港店で食した「ロールキャベツシチュー」の写真も添えます。「アカシア」の「ロールキャベツ」は、シチューベースではなく、チキンスープ仕立て。とろとろに煮込まれたキャベツ1枚の中には、牛豚の合挽きミンチが包まれています。
このチキンスープベースの「ロールキャベツシチュー」が昭和期から続く、「アカシア」の古き良き味。新宿店にも出かけますが、羽田空港でも第2ターミナル利用時には「空港内なのに老舗洋食店の味」がしっかり楽し...
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