西麻布交差点近くにある日本のイタリアンの歴史を紐解く時に必ず名前が出てくる昭和イタリアン。 訪れる人を選ぶ店です。 一言で評価を書くと誤解を与えかねないので、結論から書かず丁寧に順を追って説明します。
日本人にとっての、「イタリアン」は、いつの時代にどこで生まれ育ち、幼少期にどのような食生活を送ってきたかで、正解が異なってしまう、極めて他人に勧めるのが難しいジャンルです。 大雑把に分けると、①高度成長期のキャンティ世代→②バブル前夜のイタ飯世代→③バブル崩壊後の庶民派なんちゃってイタリアン世代、のどれかに属している人が多いです。 子供の頃にイタリアンに慣れ親しんでいなかった人は、生まれた時代に関わらず、全員③からスタートします。 ①の人がカジュアルにこの店を使うのはありでしょうし、②はこの店が正に青春でしょう。 ③の人は味にこだわる人たちではないので、もっと安くて映える店に行けばいいと思います。 2000年代に入ると、郷土色豊かな、というか本来は「イタリアン」なんてジャンルはないのだよという訂正が喧伝され、トスカーナやピエモンテ料理みたいな店が増えました。最初は、郷土色を出し過ぎて日本人に好かれないのを恐れて無難なメニューで開店したピエモンテ料理店なんかも、2010年を過ぎる頃には自信をつけて、そのシェフが現地で修行してきた味を振る舞うようになっていきます。 この郷土色豊かな時代に育ち、それを食べて大人になった人には、この店は絶対に合いません。 いや、ちゃんと厳密に書くか… 針の穴を通すような確率ですが、合う人もごく僅かいます。 イタリアの一部の地域で、2020年代以降も和食の多皿料理からインスピレーションを受けて、盛況しているところがあります。 そういった店にもいき、土着的な料理と和食が今なお影響し合っていることを知る人からすると、自分が産まれるよりもずっと昔の日本にその原型があったことに驚きと楽しみを覚えると思います。 そう、この店の料理は日本人からすると古めかしいのですが、立地とポーション、プレゼンテーションを変えれば、イタリアでは最先端となるのが不思議なものです。
ちなみに私は、②で幼少期を過ごし、20代前半はローマ育ちの人の料理を毎日食べていたので、この店への評価は甘くなりがちです。
どのような人に向けたレビューかは、ここまでとし、ここからは実際の体験ベースの話をしていきます。
巨匠の息子がメディア露出を始めているという話を聞き、久しぶりに思い出したアルポルト。 思い立ったが吉日にて即訪問です。
西麻布交差点近くですが、車で店の前につけにくいです。 広尾側から来る人は、確実に前付けしようとすると非常に遠回りになるので、素直に西麻布交差点1つ手前の信号で降りて歩きましょう。 地図アプリが悪いのですが、地図の見方を間違えると非常に迷います。 大通りから1本入った路地に入り口があり、路地から曲がった路地に入り口があるわけではないと覚えておきましょう。
店内は薄暗いというか昭和のレストランの明るさです。 照明の歴史には詳しくありませんが、時代の変遷として、薄暗い→明るい→暗い→多様化というトレンドだと思っています。 内装としては、レストランと軽食の中間くらいの風格です。 カトラリーレストがあることや、周りの客の格好からして、普段着使い推奨の店です。スーツとかドレスは逆に浮くので非推奨。靴も歩きやすい靴で、アフターディナーには西麻布の夜を楽しみたいものです。バーだけでも、デートに最適な半会員制のフルーツカクテルバー、東京屈指の蒸溜所バー、キューバンハンドキャリーの会員制シガーバー、雰囲気重視で安く上げられるバーなどなど、大体の選択肢がある東京唯一の街が西麻布です。 そう、アフターディナーを西麻布で遊ぶなら、重過ぎない食事というのは大事な要素の1つです。 ということで、今回は皿数が少ない安い方のコースを選択しています。 歴史を味わいたい人は定番メニューが入る高い方のコースを選んでください。
アミューズは、生ハムメロンとブルスケッタ。 どっちもザ昭和な味わい。 私は生ハムメロンのメロンは、甘いメロンではなく、ウリのようなさっぱりした味わいの組み合わせの方が好み。甘いメロンの生ハムメロンを食べる度に、昭和のホテルの「バイキング」を思い出します。 ブルスケッタも現代なら1個1個の素材ピースを分解して調理しますが、この店はそんなことはしません。これも街場品質ではなく、ホテル品質の一品。 ※同価格帯の場合、街場品質>ホテル品質
カルパッチョサラダも日本のイタリアンという期待通りの味。 お皿も時代を感じさせる懐かしいものですが、一周回って若い子にもこういうお皿が受け入れられているのは面白いところ。 我々の幼少期のセンスなので、青年期にはこういう皿はダサいとされる風潮もありましたが、センスが良いか悪いかというのに絶対的な指標はなく、トレンドがあるだけというのがよく分かります。
とうもろこしの冷製スープも現代的な隠し味が入っておらず、子供の頃に食べた美味しいスープのまま。 ゴールドラッシュを中心に、どのジャンルでも夏はとうもろこしが使われるようになってから、毎日外食勢に出す食材として、とうもろこしは最も難しい食材の1つとなったのですが、哀愁で全てをかき消せる一皿はチートとも言えます。
海老とホタテの春巻きにアメリケーヌソースを軽く。 どこまでも昔の時代を知る人間に優しい店です。 何とも言えない旧時代のジャパニーズ的な仕上がり。 現代的なジャパニーズならどうすればいいかは誰でも分かりますが、それだと解釈が難しくなるので、これでいいのです。
ホッキ貝の火入れも昭和。 リゾットのチーズの塩梅も昭和。 全ての料理に一貫性があるのは、狙っているからこそできることでしょう。
パスタの旨みも懐かしい。 この多層化されてないから誰でも分かりやすく美味しく食べられる旨みこそ、日本のイタリアンの特徴であった。 やっぱり普段着の食事は、こうでなくては。 今のレストランは、客が置き去りになっている面もあるので、複雑な気持ちになる。
メインもデザートも昔を懐かしみながら食料。
1時間強で食べ終わり、サクッと使いが出来るのもありがたい。
私に言われるまでもなく、予約困難店やミシュラン2つ星以上になるためには、どこをどう変えればいいのか、この店の人は分かっているでしょう。 でも、それをしないのが歴史の重みと、長年通い続ける人への誠実さでしょう。
絶品に決してなることはない歴史を語る星4の店です。 つまり、誰が食べてもある程度美味しく食べられるので、非常に日常的...
Read more2021/10/23 西麻布にある片岡シェフの懐石風イタリアン「リストランテ アルポルト」 定休日の月曜日と第1・第3火曜日を除いた11:30~L.O.13:30のランチタイムは、3種類のランチコースをラインナップ。 地下に広がる店内はイマドキ感が無い落ち着いた雰囲気。 「キャンティ」ほどではいが老舗の領域で、客の年齢層は比較的高め。
「PRANZO...
Read moreこちらのレストランで食事した訳ではなくて、長崎市の長崎スタジアムシティホテルのイタリア料理の先駆者で巨匠と呼ばれているこちらの片岡護シェフがオーナーの長崎のリストランテアルポルトで妻とランチコースを堪能しました。たまたま当日片岡護シェフが長崎のリストランテアルポルトに1ヶ月に1回の視察に来られてて私達のテーブルに挨拶に来られて感動いたしました。温和で物腰柔らかく素晴らしい方でした。さらに帰り際に私達夫婦にクロークからコートを取り出して着せていただきました。そして受付前で支配人とともにお見送りをされました。夫婦ともに大変恐縮するとともにお人柄に感動いたしました。イタリア料理の先駆者、巨匠と言われているのも頷けます。 料理も前菜からデザートまで全品美味しかったです。 この日のメニューは前菜は生ハムメロンとトマトにチーズが乗っていました。 次に人参ムースとコンソメゼリーとキャビアが上に乗っていました。人参ムースはほんのり甘くて上のキャビアがアクセントになっていました。パスタは選べて私はしまぱら鶏のアマトリチャーナを選びました。とても美味しかったです。 メインディッシュも選べて私は地元の長崎和牛のタリアータを選びました。長崎和牛はとても柔らかくてソースもとても美味しかったです。 デザートは抹茶のパンナコッタとチュウィールでした。これもとても美味しかったです。全ての料理が至高の逸品でした。特に人参ムースとコンソメゼリーとキャビアを乗せたメニューは絶品でした。価格もランチはリーズナブルでした。片岡護シェフに今度はディナーに来ますと伝えたら、ランチがお得だと言われて良心的だと思いました。店内も高級感があり、クラシック音楽が流れておしゃれでした。接客も男性と女性のスタッフ全員素晴らしかったです。 私も妻も大満足でした。 東京に旅行した際にはこちらのリストランテアルポルト西麻布レストラ...
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